1.発端：ems機器と「効果なし」との疑問

1-1. 「ems／電気筋刺激（Electrical Muscle Stimulation）」とは何か

「EMS（Electrical Muscle Stimulation）」とは、電気刺激によって筋肉を動かす仕組みのことを指します。一般的には、皮膚の上に貼り付けたパッドから微弱な電流を流し、筋肉を収縮させることでトレーニングの代わりになる――と紹介されることが多いです。

もともとは医療・リハビリの分野で、筋萎縮や神経障害を防ぐ目的で使われていた技術がベースになっています。近年では「貼るだけで筋トレ」「ながら運動」などのキャッチコピーで家庭用EMS機器が普及し、手軽さが人気を集めています。

ただし、電気刺激による筋肉収縮は“実際の運動”とは異なる反応であり、消費エネルギー量や筋肥大の効果は使用環境や目的によって変わると言われています。

筋肉に刺激を与えること自体は可能でも、体全体の代謝アップや脂肪燃焼を保証するわけではない――この点を理解しておくことが大切です。

また、EMSは筋肉の深部まで届くタイプや表層部を中心に刺激するタイプなど製品によって構造が異なります。機器の出力や周波数によって感じ方や効果の差があるため、「どのような目的で使うか」を明確にしたうえで選ぶことが望ましいとされています。

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1-2. 「貼るだけで痩せる」など過剰な広告表現と消費者庁の措置（4社への景品表示法に基づく命令）

2019年から2020年にかけて、消費者庁は「EMS機器に関する誇大広告表示」に対し、複数の事業者へ景品表示法に基づく措置命令を出しました。内容としては、「貼るだけで痩せる」「短期間でウエストが−○cmになる」といった表現が合理的根拠を欠いていたと判断されたものです。

つまり、科学的なデータや臨床試験などの裏付けがないまま、消費者が「運動しなくても痩せる」と誤認するような広告が問題視されたということです。

これはシックスパッド（SIXPAD）をはじめとした人気EMSブランドも例外ではなく、広告表現のあり方が見直される契機となりました。

消費者庁の資料によると、これらの広告は「著しく優良と誤認させるおそれがある表示」に該当するとされ、今後も同様の表現には厳しい監視が続くと見られています。

一方で、EMSそのものの技術や原理が否定されたわけではなく、あくまで「根拠を欠いた宣伝手法」が問題視された点を理解することが重要です。

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1-3. では、本当に「効果なし」なのか？利用者が感じる違和感・口コミの背景

「EMSは効果なし」と感じる人が一定数いるのは事実です。SNSや口コミサイトでは、「数週間続けたけど体形が変わらなかった」「刺激が弱くて筋肉が動いている感じがしない」などの声も多く見られます。

ただ、その背景をよく見ると、「使用方法」「目的」「期待の度合い」がズレているケースが少なくありません。

たとえば、EMSは“筋肉を刺激する”ことはできますが、“脂肪を燃やす”機能は持っていません。したがって、食事管理や有酸素運動を伴わない場合、見た目の変化を感じにくいことがあると言われています。

また、皮下脂肪が厚い部位では電気刺激が深部まで届きにくく、筋肉の動きが実感しづらいこともあります。さらに、使用頻度や出力レベル、貼り方が適切でないと、十分な収縮が得られないことも報告されています。

つまり、「効果なし」と感じる多くの理由は、機器の性能そのものよりも「使い方」「目的の違い」に起因することが多いのです。

一方で、「筋肉の張りが出てきた」「姿勢が良くなった」などの声もあるため、EMSは正しい理解と使い方をすれば、一定のサポート効果があると考えられています。

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2.広告表示と科学的エビデンスのギャップ

2-1. 消費者庁が指摘した主な問題点＝「合理的根拠なく著しく優良と示す表示」

消費者庁がEMS関連商品に対して措置命令を出した理由は、「科学的根拠に基づかない誇大な広告表現」にあります。具体的には、「装着するだけで筋肉が鍛えられる」「短期間で痩せる」など、あたかも誰でも簡単に成果が出るかのような印象を与える表現が問題視されました。

景品表示法では、こうした“優良誤認表示”は違法とされています。たとえば、企業が「1日10分で腹筋100回分」などと謳う場合、それを裏づける客観的な実験データや臨床試験が必要になります。しかし、実際にはそれらの根拠が十分でないケースが多く、消費者庁は「合理的な根拠が示されていない」と判断しました。

この一連の措置は、EMSそのものの技術を否定するものではなく、「宣伝内容に科学的裏づけがなかった」点が問題の核心だとされています。つまり、使い方や目的を誤解させる広告表現が是正された形です。

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2-2. 学術的に確認されたEMSの効果（筋肉量増・局所刺激・姿勢維持など）

一方で、EMSがまったく効果がないというわけではありません。複数の研究では、「筋肉を収縮させる効果」が確認されており、適切に使用することで筋力維持・筋萎縮予防・姿勢改善などに寄与する可能性があると言われています。

特に、運動が困難な高齢者やリハビリ中の方にとっては、筋肉の動きをサポートする手段として有用とされています。また、EMSによって刺激を受けた筋肉がポンプのように働くことで、血流が促される可能性もあると報告されています。

ただし、一般的な有酸素運動や筋力トレーニングと比べると、その消費カロリーや代謝促進効果は限定的です。つまり、「筋肉を動かす補助」としての側面はあるものの、「脂肪燃焼」や「ダイエット効果」については科学的に明確な根拠が不足しているのが現状です。

この点を正しく理解し、過度な期待を持たずに活用することが、EMSを賢く使う第一歩だと言えるでしょう。

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2-3. なぜ「痩せる＝脂肪が落ちる」と誤解されやすいのか

EMSが「痩せる」と言われる背景には、「筋肉が動く＝脂肪が燃える」というシンプルな誤解があります。確かに、電気刺激によって筋肉が収縮すれば、局所的なエネルギーは使われます。しかし、そのエネルギー消費量は非常に小さいため、脂肪燃焼や体重減少には直結しづらいと考えられています。

また、EMS使用後に「お腹が引き締まった気がする」という感覚を持つ人もいますが、これは一時的な筋収縮による血流改善や筋の緊張変化によるものです。脂肪そのものが短期間で減るわけではありません。

さらに、企業広告が「筋肉刺激＝引き締め＝痩身効果」と短絡的に結びつけた表現を行っていたことで、誤解が広がった面もあります。

本来、EMSは“運動補助”として使用するのが正しく、「食事・睡眠・生活習慣」と組み合わせて初めて体全体の変化が見えてくる――というのが実際のところです。

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3.実際に「効果なし」と感じる利用者が多い５つの原因

3-1. 目的・使用方法・頻度が期待値に対してずれている

「EMSを使えば簡単に痩せられる」と考えて購入した人の中には、「思ったほど変化がない」と感じる方も少なくありません。その多くは、使用目的や頻度の設定が実際の機能と合っていないケースです。

EMSは「筋肉を刺激する装置」であって、「脂肪を燃やす装置」ではありません。したがって、筋肉トレーニングの代替としては使える一方、体重や脂肪を減らす目的では効果を感じにくいことがあります。

また、「1日10分貼るだけで十分」といった広告の影響で、短期間で結果を求めてしまう人も多いようです。実際には、筋肉が発達するには一定の刺激量と継続期間が必要とされています。

つまり、「EMSをどの目的でどれくらいの頻度で使うか」を理解していないと、効果の実感にはつながりにくいと言えるでしょう。正しい使い方を知ることが、最も重要なポイントだとされています。

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3-2. 機器の仕様（周波数・出力）／貼り方・部位選定のミス

「貼る位置を間違える」「出力が弱い」「時間が短すぎる」――こうした使い方のミスも、「効かない」と感じる原因のひとつです。

EMS機器は、筋肉の構造に合わせて電気刺激を与える仕組みですが、電極の貼る位置がズレていると、筋肉がうまく収縮しない場合があります。とくに腹筋・太もも・背中など大きな筋群は、正しい位置に貼らなければ刺激が分散してしまいます。

また、周波数や出力レベルが低いと、筋肉が十分に動かず「効いていない」と感じやすい傾向があります。とはいえ、無理に強度を上げると皮膚トラブルや筋疲労を招くこともあるため、安全性とのバランスを取ることが大切です。

製品によって最適な出力設定や使用時間は異なりますので、必ずメーカーの推奨条件を守り、定期的に部位を変えるなどの工夫を行うとよいとされています。

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3-3. 脂肪が厚い部位で刺激が届きづらい／筋肉を動かす運動量と比較して軽い

EMSの電気刺激は、皮膚から筋肉へ電流を流して動かします。そのため、皮下脂肪が厚いと電気が深部まで届きにくいとされます。

特にお腹まわりや太ももなど、脂肪が多い部位では、刺激が表層にとどまり、肝心の筋肉まで十分に伝わらないことがあるのです。

また、EMSで起こる筋収縮は、自分の意志で動かす運動（スクワットや腹筋など）に比べると小さい収縮であることが多く、消費エネルギーも低めです。そのため、実際の運動量としては軽い部類に入ると言われています。

このため、EMS単体でのダイエット効果は限定的で、食事管理や軽い運動と併用することでようやく相乗効果が期待できると考えられています。

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3-4. 「これだけで痩せる」という期待が大きすぎる（食事・運動との併用なし）

SNSや広告の影響で、「貼るだけで理想の体になれる」と信じてしまう人も多いようです。しかし実際のところ、EMSはあくまで“筋肉を補助的に動かす”道具にすぎません。

たとえば、食事量が多かったり、日常の活動量が少なかったりすると、消費カロリーが上回らないため、体重が落ちにくいのは当然です。EMSだけで理想的な体型を維持するのは難しい――と多くの専門家が指摘しています。

EMSを使うことで「筋肉を意識しやすくなる」「姿勢が良くなる」「ボディラインを意識するようになる」といった副次的な効果はありますが、それはあくまで補助的なサポートです。

したがって、「EMSを使えばすぐに痩せる」という誤解をなくし、“運動・栄養・休養”のバランスの中で活用する意識が大切だと言われています。

引用元：

• 湘南カイロ茅ヶ崎整体院

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3-5. 安全性・禁忌の観点で使用制限がある（ペースメーカー・妊娠中など）

「EMSは誰でも使える」というイメージがありますが、実際には使用を控えた方が良いケースもあります。たとえば、心臓ペースメーカーを装着している人、妊娠中の方、皮膚疾患や感覚障害がある方などは、電気刺激によるリスクがあるため注意が必要とされています。

また、首の前面や心臓付近、内臓の近くにあたる部位に使用するのは避けるべきだとされています。強い出力をかけすぎると、筋肉や神経に過度な負担がかかることもあるため、取扱説明書を確認し、安全な範囲で使用することが重要です。

効果を高めようとするあまり無理に出力を上げたり、長時間使いすぎたりすると、かえって逆効果になることもあります。安全性を最優先にした使い方を意識しましょう。

引用元：

• 消費者庁公式サイト

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4.では、EMS機器は「無意味」なのか？正しい使い方・活用法

4-1. 用途を整理：筋力維持・部位トレーニング・リハビリ補助としての立ち位置

「EMSは効果なし」と言われることもありますが、実際には**使い方と目的を正しく設定すれば“意味のあるツール”**になります。

そもそもEMSは、医療・リハビリの現場でも「筋力低下の予防」や「関節可動域の改善」などの目的で活用されてきました。寝たきりやケガなどで自分の意志で動かせない人の筋肉を刺激し、筋委縮を防ぐサポートをする――これがEMSの原点です。

その原理を応用して、一般向けには「日常動作の筋肉維持」「姿勢サポート」「部分的な筋トレ補助」として使われています。

たとえば腹筋・大腿部・背部などの大きな筋肉に電気刺激を加えることで、「普段使いにくい深層筋（インナーマッスル）」を動かす手助けになるといわれています。

つまり、EMSは“これだけで痩せる機械”ではなく、**「筋肉を使うきっかけをつくる装置」**だと捉えるのが現実的です。身体を動かす習慣づくりの一助として取り入れることが、最も効果的な使い方と考えられています。

引用元：

• 湘南カイロ茅ヶ崎整体院

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4-2. 家庭用機器と業務用機器の違い（出力・周波数・仕様）と期待できる範囲

EMSの効果を語るうえで欠かせないのが、家庭用と業務用の違いです。

家庭用EMSは安全性を重視して設計されており、電流の出力や刺激強度が抑えられています。これに対して、整骨院・トレーニング施設などで使われる業務用EMSは、より深い筋層まで電流を到達させる高出力タイプが多く、プロが管理する前提で使用されます。

つまり、「家庭用では感じづらい」と言われる理由は、効果がないのではなく「出力の上限が安全基準内に設定されているため」なのです。

また、業務用は一度に複数の部位を刺激できたり、筋収縮のリズムを細かく調整できたりするなど、パラメータの自由度が高い点も特徴です。

家庭用の場合は、“筋トレの補助”や“日常的なコンディショニング”が目的に向いており、「医療レベルの筋強化」までは難しいとされています。

そのため、目的に応じて「自宅ケア用」「専門家サポート併用型」を選ぶと、より現実的な結果につながりやすいです。

引用元：

• 湘南カイロ茅ヶ崎整体院

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4-3. 使う際のチェックポイント（目標決定／部位選定／併用運動／頻度）

EMSを上手に活用するためには、「目的を明確にする」ことが何より重要です。

たとえば「姿勢を良くしたい」「お腹を引き締めたい」「足の筋力を維持したい」など、部位ごとの目標を具体化することで、貼る位置・時間・出力設定を調整しやすくなります。

また、EMSはそれ単体よりも「軽い運動」と併用することで効果を感じやすいといわれています。

使用前に軽くストレッチを行い、使用中は姿勢を正す意識を持つだけでも、筋肉の反応が変わることがあります。

使用頻度の目安は、週3〜5回、1回10〜20分程度が一般的。毎日長時間使用しても筋肉は過剰刺激によって疲労するため、休息日を設けることが推奨されています。

「筋肉を刺激→休ませる→回復する」というサイクルが大切だと考えられています。

引用元：

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4-4. 安全に使うための注意点（体調・使用部位・時間など）

EMSを安心して使うためには、安全面にも注意が必要です。

まず、ペースメーカー使用者・妊娠中・皮膚疾患がある方は利用を避けるようにと各メーカーが注意喚起しています。体調が優れないときや、発熱・炎症がある部位への使用も控えるのが望ましいとされています。

また、首や胸の近く、心臓の周囲などは電気刺激が神経や臓器に影響を与えるおそれがあるため、原則として避けるべき部位です。

使用中に痛み・しびれ・異常な熱感が出た場合は、すぐに停止して医療機関で相談するようにしましょう。

さらに、EMSは長時間使えばよいというものではなく、「短時間・定期的に」使う方が安全で効果的とされています。

肌に密着させるパッド部分は、使用後に必ず清潔に保ち、乾燥やかぶれを防ぐことも忘れてはいけません。

引用元：

• 消費者庁公式サイト

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